エピソード3~ハートのチョコレート~

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「ごめん。そのチョコレートは受け取れない。他に好きな子ができたんだ」 私、『松風しのぶ』にとっては、青天の霹靂であり、悪夢でしかなかった。 バレンタインデー当日、学校に行った私は彼氏である颯太に、そう告げられたのだ。 受け取ってもらえなかったチョコレート。 それは今もこの手にある。 あのあと、まっすぐ校舎の裏にやってきた。 こんな姿、誰にも見られたくなくて……。 体育座りで物思いにふけりつつ、手の中のチョコレートを見つめる。 きれいにラッピングされたハートのチョコレート。 颯太の喜ぶ顔が見たくて、いろいろな店を回った自分が惨めだった。 「なによ。……こんなもの!」 心のままに、チョコレートを投げ捨てる。 アスファルトの地面に叩きつけられ、転がる姿が自分と重なった。 それを見ていると、泣きそうになる。 泣いたら、もっと惨めになりそうで、立てた膝を抱きしめるように腕を回し、その中に顔をうずめ、涙をこらえていた。
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