『桃太郎』

昔々

「おじいさん、おばあさん」

昔々、あるところに、おじいさんとおばあさんが住んでいました。

「今まで育ててくれて、本当にありがとう」

おじいさんは山へ芝刈りに、おばあさんは川へ洗濯に行きました。
すると、川のほとりで一人の童が泣いていました。

「あの時、もしおばあさんに会っていなかったら、そのまま死んでいたかもしれません」

おばあさんはその子を家に連れて帰り、桃を切って食べさせてやりました。そのうち、おじいさんも帰ってきて、新しい家族を喜びました。この夫婦には、子どもがいなかったのです。
また、この子にも親がいませんでした。

「では、行ってきます。父母の……敵討ちに」

大きくなったその子は、“鬼退治”に出掛けるため、家を離れることになりました。

これは、昔々、あるところのお話―…