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「時間…そろそろかな…」
二人で夢中になって話しているうちに、花火が上がる時間になっていた。
ドーン―…。
秋の乾いた夜空に花火の音が響き渡った。
「わぁ…キレー…。」
「ホントだな…花火ってさ、何か不思議な感じがするんだよな」
「どうして?」
佑一が切なそうな顔をしてそう言ったので瑠璃は尋ねた。
「何かさ、自分の夢を思い浮かべてぼーっと考えるんだよな…」
「佑一の志望校って?」
「俺?俺は、K高。」
佑一は笑顔で答えた後、瑠璃に尋ねてきた。
「じゃあ、瑠璃は?」
「私はM高だよ。ほとんど部活で決めてるけど…」
「高校行ったら俺ら、別々になっちゃうな…」
佑一は、とても悲しそうな顔をして言った。
…そうだ。私に夢があるように、佑一には佑一の夢があるんだ…
瑠璃は、胸が押し潰されそうな気分だった。
「高校違っても、会ったりできるじゃん!」
………精一杯の、答えだった―…。
「ありがとな」
佑一が瑠璃の顔をのぞきこみ、言った。
……ホントは私だって心配してる。二人が違う高校に行ったら、もう連絡がとれなくなるんじゃないか…って……。
ホントは胸が苦しいんだよ…
「瑠璃は将来、何になりたい?」
しばらくの沈黙の後、佑一が瑠璃に尋ねてきた。
「んー…まだ具体的には…。佑一は?」
「俺は映画監督かな!!」
「映画監督?」
「そ。俺の作った映画で、人を幸せにしたい!」
自分の夢を語る佑一の目は、とても輝いて見えた。
「いいね、そういうの。佑一が監督の映画は、私が全部観に行くよ」
瑠璃は、いたずらっぽく笑ってみせた。
「俺らお互い、絶対自分の夢叶えよう!」
いつもと違った秋の夜空。
瑠璃と佑一はそれぞれに思いを抱え、お互いの夢を語り合った。
夜空に舞う、夢花火の下で―…。
―夢花火―fin
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