朝起きて

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携帯のアラームで意識が動く。重いまぶたを手でこすり無理矢理開かせる。 枕元にあるはずの眼鏡を手探りでみつけ、まずは視界をクリアにする。 意識はまだアンクリアのままだが、それは毎朝のことだ。 枕元から更にノートとペンをとり、ベッドから上半身を起こす。 ベッド脇の棚から煙草を選ぶ。寝起きの頭に刺激を求め、メンソールのベヴェルを取り出すとジッポで火を点ける。 最初の一口を吸い、吐き出しながらノートを開く。 日課の夢日記を書き始める。 二口目を吸いながら夢を思い出す。 坂道を車で昇っていた。坂の上に着くとそこから先は一面の砂地だった。少し先に海が見えた。車から降りてみると波打ち際や砂浜のあちこちにたくさんの人がいる。どうやら亀の産卵があるらしい。 ふと気が付くとくわえていた煙草の灰が落ちかけていた。灰皿に灰を落としまた口にくわえ吸い込む。煙を吐き出し再びペンを握る。夢の中で、海の中から無数の亀が飛び出すように陸に上がってくる。まるで黒い波のようだ。亀達は凄い勢いで穴を掘ると卵を産んだ。産み終わるとまた来た時と同じように海に帰っていった。 亀が去った後の砂浜に立ってみた。足元に卵が一つ落ちていた。それを手に取るとわずかに暖かった。陽に透かすと卵の真ん中が虹色に揺らめいて見えた。 いつかこの中の命が孵ることを予感して足元に穴を掘り埋めた。 そこまでノートに書くと煙草の灰がまた落ちそうになっていた。書くことに夢中で何口吸ったか記憶していない。灰を落としまたくわえ、ノートを閉じ枕元にペンと一緒に置くと最後の一口を味わいながら吸い込む。灰皿に押し付け火を消しながらゆっくりと煙を吐く。 さぁ、一日の始まりだ。
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