太陽

35/35
9人が本棚に入れています
本棚に追加
/100ページ
小町は部屋でベッドに横たわり、音楽を聴いていた。晃斗に薦められて買ったCDだ。 時計を見る。 約束の時間まであと少し。 小町はベッドから起き上がった。 首元には三日月モチーフのネックレスが揺れていた。 最終電車を待つ晃斗は、寒さに震えていた。 ダウンジャケットの衿元を直す。 ありったけの金が入った預金通帳は持ってきた。 新しい街に着いたらまずは家を探そう。 仕事も探さなきゃ。 中学生ってことがばれないようにしなくちゃな・・・。 不安がないと言えば嘘になる。 でもしっかりしなくてはならない。 小町と笑って暮らすためには・・・ ポケットの中で携帯が振動している。 小町からの電話だ。 「まだ荷物準備終わらねぇの??電車、行っちまうぞ??」 出来るだけ明るい口調を心掛ける。 嫌な予感が胸に巣くった。 『晃斗、アタシ晃斗に出会えて本当によかった』 「おいおい、どうしたんだよ急に・・・」 声が震える。 平静を必死で装う。 『アタシ、晃斗のことが本当に大好きだったよ・・・』 だった・・・?? 『思い出、いっぱい作ってくれてありがとう・・・』 聞きたくない・・・ 『アタシを、守ってくれてありがとう・・・』 聞きたくない・・・ 『アタシを、好きになってくれてありがとう・・・』 聞きたくない・・・ 『いっぱい、愛してくれてありがとう・・・』 聞きたくない・・・!! 『さよなら』 ツ-・・・ツ-・・・ツ-・・・ もう冷たい電子音しか聞こえて来ない。 晃斗はゆっくりと電話を耳から離した。 震える指で携帯を閉じる。 暗闇にぼうっと明かりが灯り、すぐに消えた。 「そんな冗談・・・笑えねぇよ・・・」 やっと絞り出した言葉。 涙が止まらなかった。
/100ページ

最初のコメントを投稿しよう!