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ガキィン!ギギギ…
剣のぶつかり合う音が川原に響く。
「結局、今まで一回も勝てなかったけど、今回は勝たせてもらう!」
この一年間で、クロノスは大分明るくなった。
「へっ!そう簡単に勝たせてやるか…よっ!」
ハリスが剣を弾き返す。
その反動を活かしてクロノスは左の後ろ回し蹴りを放つ。
「うおっ!…っと、我が弟子ながらよくやるねぇ…。」
しゃがんで楽々と避けるハリス。
「一撃も食らってないあんたに言われても嫌味にしか聞こえないな。」
左足が地につくと同時に右で切りつける。
ハリスはそれを受け止め、笑う。
「俺と互角に戦えるだけで学生には十分だと思うがなぁ。」
と、そのときクロノスが剣を返し、ハリスの剣を叩き落とす。
「これはっ…!」
体制を崩したハリスの首に剣をあてる。
「俺の勝ち…だな。」
息を切らし、クロノスは満身創痍だ。
「いやぁ…弟子に負けるのがこんなに嬉しいとはな。」
ハハハと笑いながら立ち上がる。
「にしてもあの技、俺がお前と初めて戦ったときの技だよな?」
「ああ、便利な技だからな、盗ませてもらった。」
「そうか…。ところで明日入学式だろ?あんなとこよく受かったな。」
そう、明日クロノスとリアは魔法学校に入学するのだ、この学校は全寮制なので、暫くハリスとは会えなくなる。
クロノスが今回は勝つと言ったのはそのためだ。
「リアが何としてでも自分と同じ学校に俺を入れようと何故か必死だったからな。」
「クク…リアも報われないな。」
頭に疑問符を浮かべるクロノス。
「さて、そろそろリアのところに向かおう。」
「……あ゙」
クロノスは立ち止まり、震え出した。
「どうした?」
「リ、リアに学校の準備のため買い物に行こうと言われていたのを忘れていた…。」
「…死ぬな。」
ポン と肩に手を置くハリス。
これから戦場に赴くかのような雰囲気が漂う。
「と、ととととにかく、家に急ごう。」
「俺、首都で妻と…」
早々にしてフラグを立て始めるハリス。
「待て。それ以上言うな。」
「ああ、じゃあ…いくか。」
二人は足取り重く歩いて行った。
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