桜の散る頃に

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元春を降ろし、早希と会った桜並木の前を通る。 「あいつ、何隠してんだろな」 ボーッと並木道を走る。 「いいんちょも、寂しそな感じだったし」 その時、ザァっと音を立てて一陣の風が吹き抜けた。 桜の花が散り始める。 「桜が…」 花びらが雨のように一度に舞ってゆく。 風が止むとゆっくりとした速さで、地面へと落ちていく。 その桜をもっと見たくて、自転車を停めて桜の木の下に座り込んだ。 「………」 桜の落ちる様をずっと見続ていた。 何も考えつかないまま、ずっと座り込み続ける。 辺りがほんのり薄暗くなるまで、考えていたが何も、何も浮かんでもこなかった。
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