桜の散る頃に

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春でも夜は寒い。 日暮れの道は真っ暗で何も見えず、自転車のライトが心許ない光の筋を作っている。 何を考えてもまとまらない。 夜桜を照らし出すライトの光に包まれる。 夜風に舞う花びらが頬を撫でる。 前に見覚えのある背中が見えてきた。 愛だ。一人でのんびり歩いていた。 「よう、何してんだ?」 「あ、凜くん」 びっくりしたような、けれどのんびりとした愛の声。 「桜がね、綺麗だから」 「散歩かぁ」 「うん、凜くんは?」 「オレはのんびりしてたら、こんな時間になっちまった…」 「ふふふ、凜くんらしいなぁ」 くすくすと笑う愛はその目を細めた。
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