桜の散る頃に

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「ねえ、凜くん」 「ん?」 「後ろ、乗ってもいい?」 「あぁ、乗りな」 自転車は進みだす。 「凜くん早希って子、知ってる?」 「ん?四宮のことか?」 「え…?」 「どした?」 「あ、ううん…そう四宮早希って子」 「あの赤いMTBに乗ってる奴だろ」 「うん、最近よく凜くんのこと話すんだ」 「勝負とか言ってんだろ?」 くすりと笑うと愛は黙った。 その沈黙は短かったかもしれない。 けれど、その一瞬は長く感じた。 そう、とても永く。 「凜くん」 また花びらが頬を撫でた。 「ここでいいよ」 「あ、あぁ」 花びらの中に愛は消えていく。 「またね」 「明日な」 その言葉を交わして。
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