赤い駿馬と銀の駄馬

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春も終わり、雨の増える6月初旬。 まだまだ天気はいいがいつ崩れるかわからない朝。 学校の坂の下、信号で止まる。 イヤホンから流れるUKパンクのリズムに身体を乗せる。 短く高い音で隣にあの赤いMTBが止まる。 四宮が見下すような笑みを浮かべ、アゴで付いてこいとやっている。 「はぁ…」 まただ。また勝負なのだ。 歩行者信号は点滅し赤になる。 (まったく…) 曲も終盤、いい感じだ。 (駄馬でもがんばりゃなんとか…) 信号が青に変わる。 ペダルを踏み赤い駿馬と銀の駄馬は駆け出す。 長い長い緩やかな上り坂を進む。 途中まではいい勝負。 けれど、さすがにママチャリは重い。 ギアのあるMTBには性能面で劣る。 (負けてられっかよっ) 残り200メートル、カーブも終わり直線の勝負。 車体差5メートル弱、まだいける。 実際このママチャリにもギアはある。 極端にペダルが重くなるので滅多に使うことはないが、このままでは負ける。 ガチャ そんな音を立てて更にペダルは重くなる。しかし、そのペダルを踏み込む。 ゆっくりと四宮のMTBに近付く。
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