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休日は基本的に何もしたくない。けれど、欲しい物があれば出掛ける。
あのママチャリで。
まさか休日まで四宮に会うことは無いだろう。
少し湿り気のある空気、少し暗い空。
(一雨きそうだな…)
そんな事を思っていると信号の向こう側に見慣れた顔がいた。
向こうもこちらに気付いたようだ。
大きな双眸、栗色の髪、薄く色づいた唇、四宮だ。
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信号が青に変わった。
漕ぎ出すオレと歩き出す四宮。
横断歩道の真ん中あたり、四宮がオレに声をかけた。
「どこに行くの?」
「本屋か服屋」
「ふぅん、なら乗せて」
「は?」
「いいから!!信号赤になっちゃうよ?」
荷台に座る四宮。
見上げると信号は明滅し始めた。
「やべっ」
急いで漕ぎ出す。
四宮はオレの腰に手を回した。
そうしたかったのか、バランスを崩したのかはわからない。
ただ錆びついた音を立てて自転車は走り出した。
ぬくもりを感じながら。
誰かに見られたら茶化されるかな、なんて思っていた。
後ろの視線にも気付かないまま。
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