勝負の行方

5/6
前へ
/99ページ
次へ
「なんの返答もなし?」 「あ、いや…」 「別にいいけどさ…」 拗ねたような、冷たいような声を発する四宮。 「なぁ四宮」 「何?」 「なんでフルネームで呼ぶんだ?」 「別に…」 「んな会話をぶつ切りにすんなって」 「嫌」 「はぁ…」 あからさまに顔を背ける。 「なんでフルネームで呼ぶんでしょうか?」 「ふむ、よろしい……理由なんかないよ?」 「は?」 「理由なんかない、ただ呼びやすいから」 「マジかよ…」 「何か理由があるとでも?」 「いや、そういう訳でもない…」 「はぁ…なら名前がいいの?苗字がいいの?」 「名前……かな?」 「そう、ならアンタも私のこと早希って呼んで」 「いいのか?」 「私ばっかりじゃ不公平、でしょ?」 足を抱えながら小首を傾げる。 一瞬ながらドキッとした。 心拍数が跳ね上がった。 傾げた頭から垂れる髪、髪の間からのぞく瞳、ほんのり染まった頬。 綺麗だった。
/99ページ

最初のコメントを投稿しよう!

18人が本棚に入れています
本棚に追加