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「なぁ凜ちゃん」
「あ?なんだよ」
久々にママチャリの荷台に乗った元春は真面目な顔をしていた。
「告白って、どやったら成功すんのかな」
「彼女いない奴にする質問じゃないな」
「ははったしかに」
「相談やら愚痴やらあるなら聞くぞ?」
「やさしーよな、凜ちゃんはさ」
俯いて呟く。
「優しくって鈍感て一番酷いんだぞ」
「え?何?」
元春の小さな声は聞き取れなかった。
「なんでもないさ」
「そか」
「それより相談にさ」
「もちろん」
元春が言い終わる前に答える。
「ありがとう」
「ん」
「オレさ、好きな奴がいるんだ。器用なくせに変なとこ不器用でさ。だけど、すごい一生懸命でさ。そんなとこ応援してたらさ。いつの間にか惹かれててさ」
黙って元春の言葉を待つ。
「でもさ、そいつには好きな人がいるんだ。それなのにそいつはさ、片思いにも一生懸命でさ。相談とかしてくんだよ。オレ……どうしたらいいのかな」
オレの背中に頭を預け俯く。
何も答えられない。
背中についた頭は震えていた。
「そいつの好きな人もさ、いい奴なんだよ。馬鹿だけど優しい奴」
「そんな奴かぁ」
「あぁ、けどさ。気付いてないんだよ。想われてる事にさ。残酷なくらいに馬鹿だよ。いい奴なだけに余計残酷…」
「そか…」
元春は泣いていた。
言葉を紡ぐ口からは嗚咽が漏れた。
顔を見なくてもわかる。グシャグシャになった元春の顔。こいつが泣くのなんていつ振りかな。
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