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元春を家まで送り、来た道を戻ると知った顔が歩いて来る。
夏姫だ。
さすがは兄妹だけに雰囲気は似ている。ただ似ているのは纏う雰囲気だけで、中身はまるで逆なのだ。
「あ、凜ちゃん」
「久しぶりだな、夏姫」
「ほんとにね、元気だった?」
「まぁな、今日も部活か?」
「うん、最後の試合だから頑張ってるの」
「元春と違ってやっぱり真面目だな」
つくづく感心する。オレや元春にはない真面目さを夏姫は持っている。
「そんなことないよ、真面目さなら。私はお兄ちゃんに敵わない」
「え?」
「ずっと私より真面目だよ」
少し夏姫の顔が曇ったように見えた。
「というか、凜ちゃんこんなとこでどうしたの?」
「いや、元春を送ってきただけさ」
「珍しいね、こっちまで来るなんて」
「話してたら、ついな」
「ふぅん」
そう言って夏姫と別れた。
夏姫には見抜かれていたかもしれない。
昔からそうだ。夏姫は隠し事を見抜くのに長けていた。
けれど、追及はしない。
だから元春やオレとも衝突しないのだ。
隠し事はいつも知っても良くない事ばかりだから。
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