帰り道、桜の雨

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長い長い話しも終わり教室に戻る。午前の朝礼で今日はおしまい。 バックを掴んでさっさと駐輪場へと向かう。 「よう、遅かったな。凜ちゃん」 先回りされた。 「何してんだよ」 「ニコニコ凜ちゃんタクシー待ち」 「オレはタクシーかい」 そんなやり取りをしながら、あの赤いMTBを探す。 しかし、あの赤いMTBはなかった。 「……行くなら乗れよ」 「ありがとなっ」 ママチャリの荷台に乗る元春。 「なぁ、凜」 「ん?なんだ?」 「朝礼ん時、女の子のこと見てたろ」 「え…」 「バレバレだっつの」 後ろに座る元春がニヤニヤしているのが、すぐにわかった。 「別に、見てなんかないから」 「早希(さき)ちゃんだな」 「あ?」 「見てた子の名前さ」 「さすが歩く女図鑑だな」 皮肉を込めたつもりだが、まったくバカ春には届いていない。 「あの子はガード固いぜぇ」 「誰もそんなこと言ってないんだがな」 「まぁ凜ちゃんたら素直じゃないんだから」 「降りるか?」 「じょーだんじょーだん」 おちゃらけた声が収まると 「まぁ凜ちゃんが思うようにしたらいいさ。応援すっからよ」 「ん、おぉ」 フッとほんのり微笑み、ポンポンと背中を叩いた。
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