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「・・・どうかな。僕にもわからない。」
「え?」
「死に瀕した人が、本当に望むのは…生きることなんだよ。」
「・・・。」
「もっと生きたい。生きて、あれがしたい。これがしたい…。
でもね。その一番の望みだけは…、叶えてあげられない。」
「…そう…ね。」
「代わりに、別の望みを叶えることで、未練を断ち切らせる。生きたいという望みを…、奪うんだ…。」
「…っ。」
猫の姿のノエルでは、あまり感情が見えてこない。
「…とても…残酷なことなんじゃないかって…、たまに思うよ。」
低い声で言って、俯いた白い猫を、シルファはそっと抱き上げた。
「…でも、そうやって…その人は、安らかに…眠れるんでしょう?」
「…ん。」
「じゃあ、きっと…、ノエルに感謝してると思うわ。」
「…そうかな?」
「…うん。」
「じゃあ、シルファの時も、僕が叶えてあげる。」
「ホント?」
「うん。きっと。」
そう言って、ノエルは、シルファの頬にキスをする。
「ふふ。ありがとう。」
シルファは微笑んで、猫をベッドに下ろすと、自分もベッドにもぐりこんだ。
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