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瞬間。
アンジェラの脳裏に、あの悪魔の、去り際の微笑が思い出される。
悪魔らしさの欠片も無い、やけに柔らかい表情だった。
「アンジェラ?」
「…えっ?」
「そんなに考え込むほどのこと?大丈夫か?」
「え?あ、ううんッ。あの…っ。ほら、こないだ…ルースの所に…行ったでしょ…。」
「ルース?あー…。あの。」
「うん。随分久しぶりに会ったんだけど…、変わって無くて。」
「そっか。」
「ギルドに入る気は無い。力の使い方は、自分で決める…って。らしいといえば、らしいんだけど…。」
「大きな力を持ってる奴ほど…、人に従って動くのは嫌がるもんだよ。上の人間が、自分より弱かったりしたら、尚更な。」
冗談めかしてはいたが、しっかりと皮肉をこめてアスカは笑った。
アスカは、若くしてマスター(魔導師)の称号を得た、腕利きの魔道士だ。
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