新しい朝

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「よう、シルファ。よく眠れたか?」 どこからともなくその声が聴こえ、見回すと、トンと軽い足取りで黒く艶やかな毛並みの猫が現れる。 得体の知れない…魔物…? 「どうした?俺に興味があるのか?」 猫のくせに妖しく笑う。 確かに、得体が知れない。 シルファは、妙に可笑しく思えて、くすくすと笑いだした。 「ん?なんだ?なにを笑ってる?」 少しムッとした様子で、ノワールはシルファの肩に乗ってきた。 「ごめ…なさ…。なんだか…急に気が抜けて…。」 なかなか笑いが止まらずにいた所に、 「朝からご機嫌だな。」 低い声が近づいてくる。 振り向くと、いかにも不機嫌そうなルースが長い銀髪をうっとおしそうに掻き上げていた。 「あ、お、おはようございますッ。」 「…はよ。ふ…ぁ…。」 挨拶も中途半端に、大口のあくびを一つ。 ぼりぼりと頭を掻きながら、シルファの前を通り過ぎる。 冷酷無比で悪魔のような男…? シルファは、聞いていた話と、今実際に目の前にある光景のあまりのギャップに、戸惑いながらも、安堵していた。 今見る限りでは、話に聞くような冷酷な人には思えない。
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