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「あのッ。トールは…ッ。」
そう訴えるシルファの目には、うっすらと涙が浮かぶ。
ドゥウンッ!
不意に、鈍く響く爆音。
シルファは、その音に覚えがあった。
見れば、炭と化した家のさらに向こう側。
村長自身が暮らす屋敷に火柱が上がっている。
「…トール…。」
シルファは無意識にその方向へと足が動く。
「だめよ、シルファッ。」
「でも…ッ、トールがッ。」
あの日と同じ。
あの火事の夜と同じ。
空が、赤く染まる・・・。
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