55545人が本棚に入れています
本棚に追加
/1021ページ
ルースは徐に立ち上がって、ドアへと向かう。
「一度連れて来る気は無いか?」
その背中に、ガイが呼びかける。
「事情は知らんが、一人で背負いこむな。ガキはガキらしく、大人を頼ればいいんだ。」
もっともらしい言葉に、ルースは怒りを覚え、ぐっと唇を噛む。
「…その大人が、アイツをあんなふうにしたんだ…。」
「なに…?」
「魔力を持っていないというだけで、人としても扱われずに。俺が学校に入ってる間に、アイツは実の親に売られた。」
「…ッ。」
「アイツを買った男は、ただ部屋に閉じ込めて、アイツを玩具扱いした。それを、やっと…ッ。」
氷の色の瞳が、憎悪と悲しみに染まる。
一筋、こぼれた涙は、まるで氷の粒のように綺麗だ。
最初のコメントを投稿しよう!