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二人の夜
「母さん。アリシアは…?」
「そんなことより。ほら、今日は御馳走なのよ?
11歳で魔道士なんて、本当にすごいことだもの。お祝いしなくちゃ。」
「アリシアはどこだよっ。部屋に行ってもいなかったっ。」
「何を騒いでるんだ?」
「父さんっ。アリシアはっ?」
「あの子のことは忘れなさい。お前に妹など初めから居ないと…。」
「アイツは妹だっ。アンタ達の娘だろっ。
なんでそんなことが言えんだよっ!」
「私達には、あなたがいればいいのよ、ルース。自慢の息子がいれば…。」
「ふざけるなっ。アリシアをどこにやったっ!」
「ぐ…っ。や、め…。」
父の首が、目に見えない何かにぎりぎりと締めあげられる。
「ルースっ。やめっ。やめなさいっ。お父さんを離してっ。」
「言え。アリシアはどこだ?」
母親にむかってそう言った、11歳の少年の顔に子供らしいあどけなさは微塵も無い。
「ぅぐぁぁあ…っ。」
ゆっくりと父親の体は宙に浮き、その顔は異常に赤く変色していく。
「やめてっ。お願いっ、ゆるしてぇぇっ。」
悲鳴にも近い声で泣き叫ぶ母を、少年は冷めた氷のような瞳で見下ろしていた・・・。
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