1.『優しいカル』

19/19
10人が本棚に入れています
本棚に追加
/121ページ
「サラ、工房の外に出るよ」 「はぃッ! 仰せの通りに」 「ごめんね、カルの事だと冷静さを欠いちゃって……」 「私も兄さん持つよ。一人じゃ重いでしょ?」 「私一人で・背・負・い・ま・す!」 「……ときどき『見える』人にとっても無茶な事を『見えない』のに平気でするよね」 全くその通りであった。 場所は移って居間。 「蘇りの古代魔法なんて……親に無許可で……よくも……」  カルミナの父親が激怒していて、サリアが逃げたくて仕方ない様子をしている。 「お前もだ! バカな弟だ! なぜ知っていて放置した!」 ルメリアはというと……。 あの人………怒って見せてないと不安で崩れちゃうんだね……。 完全に目は見えなくなったが、声と気配だけで見抜いていた。 「……聞け。みんな」 伯父さんが口を開く。 「カルにはこれは言ってない。深く考えすぎるからだが。 王立図書館の古文書研究室の意見によれば――口外禁止なのだが――あの昏睡はだな……」 神は蘇りの魔法が使われると、 使う者に決意があれば蘇りを行い 世界の理を超えた責任を自覚して背負わせるまで眠らせる 蘇らせてはならない者は無視する。 「だから『今言えるのはここまで』だったのね。確かにカルなら色々考えすぎそう。……って事は」 ルメリアとサリアはお互いを見て…… 「よーし!カルはすぐ帰ってくるよ!」 「兄さんなら大丈夫!」 「なぜすぐ決め付けられるかッ!」 ついに父親がキレた。 「兄さんは世界の果てを超えたのをわかってるよ。自覚してる。」 妹、さっきの弱気はどこへやら 「カルはただでさえ歳相応じゃない高い魔力とか凄い魔法技術とか背負って、力に伴う責任の重さに悩んでましたから。すぐですよ」 本質を『見た』者だけの微笑み 「うぐぅ」 この女の子二人のほうがよっぽどカルミナを理解しているのを感じた父は黙るしか無かった。 「ところで……」 二人の声がかぶる 「「伯父さん何者!?」」 「あはっ☆ただの魔法使い。」 絶対に違う。 本来なら国家機密になりかねないはずの蘇生古代魔法を調べてきたり、口外禁止の見解を聞いていたり。 まず、三日か四日おきにふっと消えて、またしばらくすると居候している時点で怪し過ぎる。 ……サラはこの時、『伯父さんには誰も勝てない』と直感したという。
/121ページ

最初のコメントを投稿しよう!