1.『優しいカル』

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6の月/   /1日  第1週 【至聖の安息日】  野原と森と川に挟まれるようにして、その家は建っていた。 一番目立つ3階建ての母屋と、そこを囲むようにある4、5の離れ。全体は木造で、周りを囲むように光の粒子が舞っていた。ちょうど蛍の光を白くして、気まぐれでなくした感じだ。 そんな家の地下室にある工房の机の前に、紺色の髪の毛の一人の少年が座っていた。彼の顔はすぐそばにある光の球体で照らされていたが、それに反して表情は暗かった。 彼の名は、カルミナ=タウト=ヴァレン ファーストネームが女性っぽいが本人は気にしていない。 13才にして素晴らしい魔法の扱い方をする、とにかく凄い子供であり、 不安や悩みを、ただの人の比では無い程に抱えていた。 <><><><><> 「……はあ」 ルミィ、来い、来てくれ。と念じながらの、哀愁をこめたため息が、つい零れた。 机の上には、色々な物が置いてある。机の隅に追いやられている設計図に見える物――半月前から動かされていない――と乱雑に散らばる本達。 『工学・入門から製作まで』 『デザイン ―その全て―』 『飛行力学と魔法について』 『魔法で実践! 流体力学』  そして正面に置いてある紙の束。書いてあるのは古代文字であり、『蘇りの神魔法』 僕が見ているのはその紙の束。 「あと二日で訳して、と」 そして、視線を後ろの暗がりに向けた。――正確には、10m離れた壁際の血痕に。 絶対に……訳さないと。
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