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元はと言えば、半月前の事。
「サリア~! ただいまー」
あの日、伯父さんの魔法の特訓から帰った僕は、直ぐに自分の部屋に向かった。そして、そのままの勢いで本棚に寄り『魔法で実践! 流体力学』を手に取ると、
「我が隠せし道よ、開け -地下室へ!-」
本棚の後ろの階段へと歩いていった。
螺旋階段を下りてしまえば、そこにあるのは幼なじみのルミィいわく『カルの地下工房』。
僕の趣味、言い方を変えると野望――自力での飛行機の製作――の為の部屋。
「サリア、今帰ったよ。あ、ルミィ!」
妹に声を掛けたところで、もう一人も来ている事に気づいた。
僕の妹は、まあなぜか僕に全然似てない。僕よりも頭一つほど低い背と肩で切り揃えた短い黒髪に大きめの目、なにをするにもハイテンションな11才。
サリア=セナルティ=ヴァレン
語学が大得意、とくに古代語を面白がっていて……しばらく前に、僕にも無理矢理叩き込んだ。才能があるんだろう、彼女がいくつの言語を習得してどれだけの本を読んでるのか僕には分からない。
そうそう、古代語を僕に教えこむ時に、こんな事を言ってた
「古代語なら魔法に役に立つでしょ? 兄さん」
僕が魔法にしか興味がないと決め付けてるみたいに聞こえるのは苦笑した。でも、それ以上に気になる事がある。
古代魔法と呼ばれるのは普通の魔法と全く違うメカニズムで働き、多大な危険を伴うので古代語を読んでも古代魔法を使う人などいない……んだけど。サリアは、何て言うんだろ、常識が通じないというか、知識を持ってても実感を伴ってなくて、活かし切れてないというか。
彼女がそんなだったのを、早い目になんとかしていれば、と今になって思う。
この時には、古代魔法の事もあまり分かってないようだし、サリアにも伯父さんの講義を受けさせよう。実践はなくてもいいから。まだ伯父さんには頼んでいないけど、早いうちに。……なんて考えてた。
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