1.『優しいカル』

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しばらくして 地下室に響く轟音 爆発 反射的にルミィを抱き寄せた。……ルミィの目の事を心配したのか、それとも他の考えに基づいてか、今となっては忘れたけど。 「カル? ……何が起こったの?」 ルミィが戸惑いながら聞いてきて、それに答える。 魔法薬の失敗で大爆発、なんて、コメディならまだしも実際にはこんな被害を生むのに。 「サラが……満月草のいたんだのを入れたんだと思う、ほら、今日は満月だもん。摘んで3週間で棄てなきゃいけなかったのに1ヶ月前のを……。見せるよ」 はっきり言ってこれを直視するのはきつい。 自分の声が辛そうに震えていたのは、気づかないふりで 魔法を発動する。 「我が目、わが視覚、この者につながりて貸し与えよ -視覚接続-」 はっきりと見えるように。 「あ、え、カル?ありがと」 ルミィの後頭部に手を置いて。 「頭の中に映像が流れ込むのって、慣れない……」 「ゴメン、気分悪いよね」 「……大丈夫。いろいろと」 ルミィの呟きは消えていったが、それよりも 「……サリア」 「……サラ」 壁際に倒れた一人の少女 もう、彼女は笑顔を向けることも、古文書を読むことも……。 「-治癒!- -治癒!-」 「心臓は……止まってる」 脈を確かめて怯えるルミィと僕。 「心臓マッサージ……だっけ?」  必死で記憶を探る。 「私、やっておくから人を呼んで来て」 「ありがと」 工房から出て伯父さんと父さんを呼ぶ。 <><><><><> 「つれて き  た。」 大きな治療施設が無い田舎だからと、こういう処置は学んでいたのだが……。 「魔力が……魂が……抜けるのが見える…………」 「え! ルミィ? 見えるって」 次の瞬間、微妙な感覚を他の面々も感じ取り……その場にいた家族全員にも絶望が押し寄せた。 サリアは逝ってしまった……。 僕の平和な日常が崩れた二週間前の話
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