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視線が俺に刺さる。
(あ。ノープランで乱入しちまった……ん? 良く見りゃコイツ等、三年の不良共か……ウゼェな……ま、いいや)
「んだてめぇ」
広瀬の胸倉を離した男が声荒げるが、三年に対して完全に無視を決め込み、広瀬の元へと近付いて行った。
「おい、広瀬。てめぇは、ここで何してんだ?」
「……え?」
状況が理解出来ず、呆けた広瀬が俺を見詰める。
「え、じゃねぇえんだ、よ!!」
―ガッ!
「っ!!」
俺は激情に任せて、広瀬の顔を殴った。
「なんでアイツをほったらかして、こんなトコに居るのかって聞いてんだよ!!!」
俺の怒声が響いた後、室内は静まり返る。
「見てみろ」
廊下で拾った携帯を、目の前で困惑し立ち尽くすクソガキに渡しすと、液晶に表示されたままの文字に目を通し出した。
「今何時だと思ってんだ?ああ?
……ホントはてめぇの代わりに、アイツのとこに行こうかとも思ったよ……でもな、ダメなんだよ……お前が行かなきゃアイツは笑ってくれねぇえんだよ!!!!」
「……ごめん」
「馬鹿かてめぇ!! 謝る相手がチゲェだろうがぁ!!
俺に謝ってる暇が有るならサッサと行きやがれ!!」
「……ああ!ありがとう!」
そう答えた広瀬は、クソガキで無く漢の顔をしていた。
(けっ、良い顔すんじゃねぇか……)
「なに勝手に話し纏めてんだよ!」
それまで黙っていた三年達が喚きだしす。
(マジでウゼェな……)
「まぁまぁ、この辺で勘弁して下さいよぉ。コイツこれから大事な用事があるんで」
穏便に済ませようと下手に出る……が。
「もしかして、あのブスとデートとかかぁ?」
「きっとそ…ぐごぉ!!!!」
……無理だった。
片桐を貶され、俺の理性は簡単に崩壊し、思わず近くにいた男の股間を、躊躇無く蹴り上げていた。
(やっちまた……モテたくて入ったバスケ部だけど、退部かなぁ……アン〇イ先生だったら、顎タプタプで許してくれたかなぁ~)
「まぁいいや。……おい、お前はもう行け」
他の三年の様子を伺いながら、広瀬を促す。
「で、でも!」
「でもじゃねぇ!!
行かなきゃお前もぶっ飛ばす!!」
「……解った」
逡巡した後、広瀬は頷き出口へ向け踵を返した。
「おい広瀬!」
背中越しに呼び止めると、ドアに手を掛けていた広瀬が振り向く。
「雨降ってっから、傘忘れんなよ?」
「了解っ!須本!!」
短い返事を返し、広瀬は走り出して行った。
(呼び捨てかよ……)
「うお!!ムカつく!!あんたら死刑確定な!!」
そう言いつつも、俺は微笑んでいたのだった。
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