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するとアルカードは、時間も惜しいという代わりに、すぐさま彼の肩に手を置いてとんでもない事を言ったのだ。
「今、闘技場では第二試合、第三試合が終わったところなのだが……。続く第四試合で怪我人が出た」
現場に直接指事して、率先して動かねばならない筈の彼がその場にいなかったのだから、今回に関してはアルカードの責任でもない。
むしろ彼が責められても良い状況で、それなのにアルカードの表情はとても悔しげなものであった。
「怪我人……だと?」
考えてもみなかった由々しき事態に、即座に態度を変えた彼の表情が曇るのを見て、アルカードがシリルを気にしながら耳打ちをした。
「……まさか。本当に……?」
「とにかく早く行こう。私の見たところでも、あいつはただ者ではない」
何かを聞き終えた様子の彼だが、その内容をすぐには信じられないのかそう反論する。
だが、アルカードは百聞は一見にしかずといった感じで彼の腕を取ると、そのまま返事も聞かずに引っ張り、執務室から闘技場へと赴いた。
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