第六章・―疾走―

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「申し訳御座いません!」  現場に駆けつけた彼の姿を認めるなり、それまで騒ぎに収集をつけるため、今までは指示をしていたルヴァンが勢いよく頭を下げた。  ルヴァンはそもそも彼の命令でリディウスにつきっきりだったのだから、別段落ち度はない筈なのだ。  それでも深く責任を感じているのか、下げた頭に応じて金糸の鮮やかな髪や空色のマントも揺れる。  彼とて予めあらゆる事態は想定して事に及んだ筈だが、よもやこうした展開は予想外であったのだ。  それ故今は誰を咎める時間を割くのも後におき、すべき事を優先しようと口をひらく。 「今はそのような事、さしたる問題ではないだろう。とにかく状況説明と、怪我人の具合を確認させてくれ」  それでもいまだ頭を下げるルヴァンには感服するものがある。  だが、一刻を争う状況なのだからそのような場合ではないと、言外に態度で示してみせるとそのまま闘技場へと歩み寄る。
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