第六章・―疾走―

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 人々の騒ぎの中心にあるのは、血を流して横たわっている男で、彼は咄嗟にトーナメント表を思い出し、それが誰であるかを確認した。  男は百戦錬磨の魔法の使い手で、名前はティアマト、そして対戦相手は二刀流のフルフェイドだった筈だ。  情報収集する際には彼らの顔まで認識していたから、倒れているのはティアマトだと即座に理解出来た。  問題はどうしてそうなってしまったかで、対戦相手のフルフェイドがこの場に既にいなくなっているのも気になる。  彼がそこまで確認したところで、ルヴァンも傍へと歩み寄ってきて説明を始めた。 「第二試合のカリオ=シュール、カイト=ラトヴォルト、及び第三試合のルイシード、ルーナ=シャラデンスまでは、順調に事が運んでいたのですが……」  そこで不自然に言葉を切ると、誰にも聞かれないようにとの配慮なのか、辺りを見回してから彼に近寄り、耳打ちをするように低い声で続けた。
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