839人が本棚に入れています
本棚に追加
/300ページ
「ティアマトは、馬鹿な奴だな」
それは呟くような台詞で、耳をそばだてていないと聞こえないくらいの声音だったが、彼は僅かに反応するとルーナを見返す。
「……何か、知っているのですか?」
賊に情報を与えてもらうという体はあまり良しとはしないのだが、何かしら知っているのならば掴んで利用させてもらいたい。
焦る様子を悟られぬよう、なるべく自然に見えるように返す。
「それを調べるのが貴様の仕事だろう。サウスパレス王国の騎士、カイル=グランデ」
彼の質問に嘲笑うように応えるルーナに、やはり一筋縄ではいかないかと嘆息した。
しかしそれでも、しばらくは変化がないかと見合っていたが、やがて脈はないと判断し、彼の方から視線を逸らすと身を翻した。
「ルーナ=シャラデンス、次に闘うのを楽しみにしていますよ」
穏便に聞き出すのが無理なら力ずくでそうするしかない。
そうして背中越しにそれだけ言うと、後は用がないとばかりに選手控え室を後にした。
最初のコメントを投稿しよう!