第六章・―疾走―

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 闘技場へと続く廊下を歩いていると、既に激しい試合が展開されているのか、徐々に周囲の様子が騒がしくなってくる。  武術大会も大詰めに近付いてきたからか、最終的に誰が優勝するのかという話題でも盛り上がっているようだった。  何らかの事情で闘技場から離れている民衆も、各々応援している選手の名前を挙げながら予想を続けている。  そんな会話を聞きながら歩き続ける彼の視界にふと、闘技場が見えそうで、しかし闘技場からはその姿が見えないかと思われる微妙な位置に、男が立っているのが入る。  男は闘技の様子をつぶさに観察しているらしく、いまだ彼という存在に気付いていない。  そしてそれを良い事にして彼も、遠目に見て男の顔が判別出来るくらいの場所で観察する。  彼にも見覚えがあるその顔は、武術大会に参加している、長剣を扱うランスロットであった。  ここまで勝ち抜いてきただけあって、かなりの使い手だと認めているものの、ランスロットに関して言えば、最後まで素性が知れなかったのだ。
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