第六章・―疾走―

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 話に納得するどころかそのまま腕を組み、考え込む姿勢を見せたランスロットは、やがて顔を上げると低い声で言った。 「カイル殿、私は以前、トランシルヴァ王国の国境で、警備隊を率いた事がある。だから分かるのです。今サウスパレス王国に、……アルカード様がきている事も」  最後は彼に耳打ちするように、一際低い声を出すランスロットは、先刻までとはまるで違う鋭い視線で彼を射ぬく。  まとう雰囲気からでもかなりの実力者と見て取れる上、あまりに冷静な状況判断に、さすがの彼も感嘆の息を吐く。  ランスロットの立場と言葉が本当だとすれば、既にアルカードとも面識がある筈だ。  アルカードが政治にも民との交流にも、決して手を抜かない人柄である事は、彼が一番良く知っている。  そのため一般の民でもアルカード王子の顔は知っているものが多く、信用しても良いものと判断する。
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