第六章・―疾走―

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 アルカードの指摘は図星であったのか、悔しげな表情を浮かべ小さく舌打ちするが、敢えて反論はせずウァプラに指示を出す。 「ウァプラ、やってしまえ!」  それを命令と受け取ったのか、腹の底にずしりと重くのしかかるような、低いがよく響く咆哮をあげたウァプラが突進の構えを見せた。  ウァプラのような巨体に突進されれば、いくらアルカードが俊敏と言えど、避けきれないばかりか、ひとたまりもなく倒されるだろう。  当たりどころによっては、一撃で命を失う危険性も高い筈だ。  だが、やはりアルカードはまだ、諦めた表情を浮かべてはいない。  それどころか益々不敵な笑みになると、ウァプラに対して“早くかかってこい”と挑発した。  何かしら対抗策でもあるのか、ことモンスターに関しては自分の方が上手でもあるとでも言うかのように、剣を構えて受けて立つ姿勢を見せる。  それを敵からの侮辱と受け止めたのか、挑発する態度が気に入らなかったらしく、ウァプラ今一度咆哮をあげると、今度は待ったなしでアルカードに猛突進したのだった。
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