第二章・―予感―

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「その辺の事は、ヴォルグ王からの許可も得ておる。なるべく身に危険が及ばぬ立ち位置ならば、どこであろうと咎めはせぬとな」  それ程に一人娘の命を護りたいのであろう。  国境を越えるのも危険と言えば危険ではあるが、サウスパレスにまで辿り着ければ、少なくとも故郷よりは安全は保証出来るだろう。 「そうですか。ならば一番疑われ難く。更に、常に私の目の届くところに配置させて頂きます」  考えながら言葉を紡ぎ出していく彼に、ガンダル王は何度も頷いて、初めてほっとした表情を浮かべる様を見ると続けた。 「御用件はそれだけでしょうか、ガンダル王」 「うむ。シリス姫が極秘に到着するのは、明日の午後だ。くれぐれも、誰にも知られぬよう計らってくれ」 「畏まりました」  優雅に一礼し、謁見の間を去る。  彼がアルミラから、母の容態が思わしくないとの話を聞いたのは、まさにその後の事だったのだ。
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