第二章・―予感―

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 執務室での現在のやり取りに話を戻す。  数日前のやり取りを思い出し、しばし沈黙していた彼も、やがて顔を上げるとゼルの方を見て長く息を吐いた。 「ま、今はとにかくアルカード王子を迎え入れる準備をしなくては」  問題はいつも通り一つずつ確実にこなし、解決していく。  そうでないと何一つ事が進まずに、問題ばかりが山積みとなりいずれ身動きが取れなくなってしまうからだ。 「そうだねぇ。明日の事だものね」  にっこり笑いながら返すゼルに、長い沈黙を待たされたという怒りの感情は、さほどない。  それどころか器用にペンを持て余しながら、軽快にそう応えるだけだ。  てっきり何かからかわれるか、突っ込みでも入れられるのかと思っていたのだが、そうではないと確信した彼は、胸を撫で下ろすと少し安心したような表情となった。
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