第三章・―アルカードの提案―

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 謁見の間を出てから執務室へと向かう道は少々長い。  出てきてすぐ左右には廊下があり、そして壁に沿うようにドアが並んでいる。  中はそれぞれ客室であったり会議室であったりするのだが、特に今寄る必要もない場所ばかりだ。  ドア群を左手にするならば、右手に季節の草花が咲き誇り、きらきらと太陽の陽に照らされ輝く噴水があり、その前で待ちかねた様子のアルカードが待っていた。 「アルカード王子」  彼が立ち止まり、一礼しようとするのを遮ってアルカードが先んじる。 「久し振りだな、カイ。元気にしていたか?」  先刻までとは違うかなり砕けた表現で、アルカードは人好きのする笑顔を浮かべ、片手を上げながら彼に近付いて行く。  彼はしばらく周囲の人影を気にしていたが、やがて誰の気配もない事を確認すると、笑みを浮かべながら軽い口調で返した。
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