第三章・―アルカードの提案―

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「まぁ、一応は元気だがな。それよりも、変な騒動に巻き込んで悪かったな、アルカード」  出来れば巻き込みたくなかったのだがと付け加えるが、さして気にした素振りも見せずにいるのはアルカードの方である。 「いやいや。他ならぬカイの頼みを、この私が断る理由もないさ」  結構な無理難題を押しつけている筈なのに態度は軽く、それどころかわくわくしている様さえ垣間見えるから少し心配になる。  事の重大さを理解していない訳はないのだろうが、これは引き受けるより先に、何か目的があってやってきたのだろうと思わざるを得ない。  アルカードは始めて逢った時から彼の事を気にかけてくれていて、本当に身分の違いも気にせずに、まるで自分の家族であるかのように扱ってくれる。  そのお陰で二人は親友とも呼べる、気のおけない仲間のような、兄弟のような存在だった。
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