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「カイル様の御命令ならば、このアルバート。例え火の中、水の……」
「そのような事より。これは正確な書類なのだろうな」
黙って聞いていると話が長くなりそうな予感に、アルバートには申し訳ないと思いつつも半ば強引に言葉を遮り、仕事の話に持っていく。
下調べを済ませてからの最終確認であるのだから、まず間違いはないだろうと思えるが、万が一の可能性も潰しておくに限る。
だからこそ敢えて質問してみたのだが、アルバートは話を切られた事に残念がる素振りも見せず、それどころか表情を引き締めると、真面目な口振りに戻して頷く。
「はい。これで確実に間違いはないと、何度も確認致しました」
「分かった。ありがとう。もう下がって良いから、後はルヴァンの指示に従ってくれたまえ」
彼にそう言われたアルバートは嬉しそうに頷くと、再び優雅に一礼してから、その場を走り去った。
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