第四章・―暗躍と陰謀―

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 細々とした雑事も滞りなく進み、武術大会に出場するための選手が、続々とサウスパレス王国に集まってくる。  そんな中で、人ごみの中に紛れた一組の男女が視線を合わせると、束の間驚愕の表情を浮かべる。 「……お前」 「ちっ、このようなところで会うとはな。……まさか、そちらも仕事できたのか?」  動き易く、軽装ながらも隙のない衣服に身を包んだ美女が心底嫌そうに言う。  すると、長髪を濃紺のリボンで結った、一見華奢そうだが美形ではある、そんな男がため息を吐きながら近寄ってきた。 「リディウス、お前の雇い主は?」  美女が聞くが、男、リディウスはそちらを一瞥するだけで、小さく舌打ちしながら低い声で応える。 「そのような事は、聞くだけ野暮と言うものだ」  リディウスも軽装ではあるが、一見騎士のような格好をしており、簡素ながらも銀色に鈍く光る鎧を身に纏っていたりする。
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