鮮血

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それは突然の出来事だった。 庭先で談笑しながら壊れた柵を直していたクレアとシアン。 クレアはふとシアンの向こうの小道を歩いてくる人影に気付いた。 しなやかな黒髪の男。 男が足を踏み出す度サラサラとした髪が風になびく。 そして黒髪に映える麗しい顔。 遠目からも整っているのが分かる。 女性のようながらキリと持ち上がった眉から逞しさが感じとれる。 のどかな村の端に佇む小さな古い家。 この場には明らかに不釣り合いの都会の洗練された男だった。 そんな男が音もなくシアンの背後に近づいて来て 「…………」 声をかける事もなくクレアは男に吸い込まれるように見入った。 男は自然な流れで腰にさしていた長剣を抜き取ると、 ――ためらいなくシアンを斬りつけた。 声を出す間もないくらいの瞬時の出来事。 クレアの丸く見開いた目に、剣を振り上げた瞬間に男の形の良い薄い唇が嬉しそうに歪むのが焼き付いた。
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