わからない気持ち

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「じゃあな。木間」 芝久保は、特に音も立てずに保健室から出ていってしまった。 保健室では、前橋先生と二人きり。 「前橋先生」 「はい?」 「せっかく、芝久保くんが変わったのに。何で邪魔するんですか?」 「邪魔?僕は、木間先生のことを考えて芝久保を追い出したんですよ?」 「芝久保くんは、前橋先生を殴らなかった。これにはきっと、何か理由があるはずです。それを問いただせたかもしれなかった」 「芝久保に理由も何もありませんよ。僕を殴らなかっただけで、変わったと決め付けるのもどうかと」 「・・・・・・。わかりました。失礼します」 私は、保健室から出ていこうと立ち上がる。 「ちょっと、待ってくださいよ」 「いえ、大丈夫です」 「ちょっ、木間先生!どうしていきなり、」 バシン!私は、保健室のドアを勢いよく閉め、早歩きで職員室に向かった。 自分でも、何でいきなり保健室を後にしたのかわからない。 ただ、私の頭の中は、芝久保でいっぱいなだけだった。  
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