悲しきモノローグ

1/1
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ

悲しきモノローグ

そう言えばあの日も今日と同じ雨の降る夜だった…。当日騒がれていた連続放火犯が、俺の家にも火を放ったのだ。 両親と3人、幸せに暮らしていた日々は突如となく奪われた――。 『父さん!母さん!!』 『尚也、父さんたちは大丈夫だ。早く外へでよう』 火の手は思っていたより予想以上に早かった。 2階で寝ていたため、火の気に気付くのが遅くなったせいでもある。 しかし、悲劇はそれだけではすまなかった。 突如、焼け崩れた柱が俺をめがけて落ちてきたのだ。 『尚也!!』 母さんの叫ぶ声だけが耳に残っている。 一瞬何が起こったのかさえ分からなかった。 けど、目の前の状況が嫌でも視界に入ってくる。 そう、母さんはオレを庇って落ちてきた柱の下敷きになったのだ。 『母さん!!!』 『尚也、母さんは父さんが連れていく。お前は先に外へ出なさい!』 『でも…っ』 『尚也!! 父さんは嘘はつかないだろ?先に行って助けを…。 大丈夫!』 その時、父さんは笑っていた。 だから必ず母さんも連れて出てくると信じていた。 しかしその後、父さんも母さんも出てくることはなかった。 『出てくるって言ったじゃないか。父さんも母さんも!!大丈夫だって…。 俺、どーすりゃいいんだよぉ…』
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!