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悲しきモノローグ
そう言えばあの日も今日と同じ雨の降る夜だった…。当日騒がれていた連続放火犯が、俺の家にも火を放ったのだ。
両親と3人、幸せに暮らしていた日々は突如となく奪われた――。
『父さん!母さん!!』
『尚也、父さんたちは大丈夫だ。早く外へでよう』
火の手は思っていたより予想以上に早かった。
2階で寝ていたため、火の気に気付くのが遅くなったせいでもある。
しかし、悲劇はそれだけではすまなかった。
突如、焼け崩れた柱が俺をめがけて落ちてきたのだ。
『尚也!!』
母さんの叫ぶ声だけが耳に残っている。
一瞬何が起こったのかさえ分からなかった。
けど、目の前の状況が嫌でも視界に入ってくる。
そう、母さんはオレを庇って落ちてきた柱の下敷きになったのだ。
『母さん!!!』
『尚也、母さんは父さんが連れていく。お前は先に外へ出なさい!』
『でも…っ』
『尚也!!
父さんは嘘はつかないだろ?先に行って助けを…。
大丈夫!』
その時、父さんは笑っていた。
だから必ず母さんも連れて出てくると信じていた。
しかしその後、父さんも母さんも出てくることはなかった。
『出てくるって言ったじゃないか。父さんも母さんも!!大丈夫だって…。
俺、どーすりゃいいんだよぉ…』
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