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「ど、どうしてだい?」
生硬い笑いで繋ぐ僕。
「君にはこの現実社会に於いて、豊田蓬ちゃんという美人が間近にいるじゃないか」
渡くんが作る設問には非常に困るのです。因みに蓬くんの前で『美人』という言葉を口にしたら怒られるからね。
「然も菖蒲くんには普通の人間とは別物で、特殊な能力を備えてるだろう。特別にも程というもんがあるぜ」
僕だって厄介な能力を身に付けたくて取得したわけではないのだけど……。
「その人間離れした能力を使い、次々に困ってる人々を助け、悪者をやっつけて正義のヒーローとなるつもりだろ! そして話の道中、色んな女子が登場する度に菖蒲くんに惚れていき、終いには学園ハーレム生活を完成させるつもりじゃないだろうな? あのさ、俺はその手の話、うんざりなんだよ。何の人間描写もなくただただ強い、背景もなにもなく漠然とモテる、ペラペラなシナリオだけは完成しないでおくれ」
「うん、菖蒲くんのチートじみた技はこの先遺憾なく発揮されるんだろうね……」
えええ……、無患子くんまでも渡くんに賛同してるではないか。
「この際だから一言だけ言わせてもらうけれどもさ、大体『普通の高校生』が『摩訶不思議な力』を手に入れている時点で『普通の高校生』じゃないのさ。それがどういうわけか『普通の高校生』という常套句を冒頭に使いたがる。そんな馬鹿の一つ覚えのように乱立したこの世に憤りを感じるのは決して俺だけじゃない筈だ! 違うかね!」
どんどん渡くんの口が回り始めたぞ。これは非常に面倒くさい。
「ちょっと、そんなつもりは毛頭な――」
畳み掛ける様に質問が投げ掛けられる。
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