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「菖蒲くん、手伝おうか?」
「あ、ううん。一人で大丈夫だよ」
――結局、大変満足というわけではなかったが、大方片付けも一段落ついたので少しだけ捲ったシャツを戻して席を立った。
ふう。取り敢えず荒療治だけど、今日はこのくらいで切り上げるか。これ以上、凝視されては堪んない。
「お待たせ無患子くん、では帰ろうか」
二人で教室を抜けようとすると、凄まじく突き刺さる強烈な視線を背中から感じ取った。
こんな時に悪魔が現れでもしたか? どうしよう、姿が見えないとなると確実にサンドバック状態で痛めつけられて瀕死は免れない。
対処法が見つからないまま背筋を伸ばし、長年お蔵に仕舞っぱなしで全く油を注してない錆びついた発条人形のように僕の首は軋む音を立てながら振り向いた。
それは恨めしい、憎悪に満ちた目でこちらをじっと睨みつける渡くんの姿がそこにはあった。
「俺も君たちと一緒に帰りたいよ……。何で委員長なんて大役を引き受けちまったんだ。委員長になるって……かなり大変だ」
そんな目で僕を睨まないでおくれ。確かに軽率な発言をしてしまったことは謝るよ。
大谷委員長……本当にご免。
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