夏の夢

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「いや、してないけど。」 「…じゃあなんであんな所であんな無様な格好してたわけ?」 「…あのね、なんか知らないけど拓実に正座させられて。」 「…なんで?」 「いや、知らない。」 「…はぁ。」 美姫が溜め息をついた瞬間足を思いっきり踏まれた。 「いっ…たいなぁぁ!!」 「なんで理由知らないのに謝ってんの。」 「だってあいつ一回喧嘩したら口聞かないし!」 …いや? なんか顔青ざめて避けてる感じだったような…? そうこうしているうちに部室の前に着いた。 「…汗臭さ。」 「え、運動してないじゃん。」 「…。」 部室の前に着いた後、顔を歪めた美姫に今度は脛をつま先で蹴られた。 「いってー!」 「君の汗臭さが移ったんだよ馬鹿野郎。」 「そうならそうと言えば良いじゃん…!」 「何してんだ?」 部室から既に制服に着替えた拓未が出てきた。 あ、俺等ドアの真ん前にいたんだ。 「邪魔だ。…おはよう美姫。」 「おはよう拓未…で合ってるよね。名前。」 「ん、正解正解。」 「…ん?」 ちょっと待て。 今美姫は何て言った? 拓未は何て言った!? 「な、名前!」 「主語を言ってくんなきゃ分かんない。」 「いつから名前で呼ぶようになった?!」 昨日は…、雪園だったよな? え?いつ? 爽也が一人で頭を抱えていると、横から思考を遮る様に拓未が淡々と話始めた。 「俺、こいつのメルアド知ってんだよ。」 まぁ、玖美からだけど。と付け加えたが、爽也の耳には届かなかった。 「…俺美姫のメルアド知らない!」 「でしょうね。教えてないもん。」 だったら俺にも…! と言おうとした瞬間。 キーンコーンカーンコーン 「あ、予鈴。」 「早く行かないと。」 「え、ちょっ…!」 「じゃあ、私達先に行ってるから。」 「え!?」 「お前まだユニだし。」 二人の腕を掴もうとしたが、美姫がこちらに首を傾げ、口を少し動かした。 (遅刻したくないの。) その時少しだけ哀れな気持ちになった。
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