出会い…?

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「…」 「嫌そうな顔をしない!」 「…チッ。」 「舌打ちしても駄目。つかするな。」 「…ねぇ。」 渋々爽也の方へ振り返り、未だに嫌そうな顔を変えず、吐き捨てるように言った。 「…何?(うわぁ、嫌そうな顔。)」 「…ありがとう 田中。」 「……へ?」 田中って誰? 「ひーめー。」 「ん?何でそんな顔をしている、玖未。こいつ田中だろう?」 「ぶっは!田中って…!」 普段はそんなに笑わない拓実も今回ばかりは吹き出している。 しかも相手も真顔で言っているので悪気は無く、そして本気だろう。だから尚更たちが悪い。 「…本当に覚えてないの?」 「何が?」 「昨日図書室前であったじゃん!」 「…?」 「春野だよ!春野爽也!」 「…あぁ、急に自己紹介してきた奴か。」 「酷っ!!どんな覚え方だよ!」 「いや?さっきまで忘れていたが?」 無表情のまま軽く首を傾げ、相変わらず悪気無く言う美姫。 この子は物覚えが悪いのか、 …いや、相手は学力No.1だ。 記憶力が悪いわけがない。 「まったく、…ごめんね春野君。姫は興味無い人の名前は覚えない子なの。」 「あははっ…!爽也興味ねぇって。」 「覚えても無駄だろう。」「言い切られた!」 「…分かった。覚えるよ。…佐藤。」 「わざとだよね!」 「…チッ。」 「また舌打ち…!」 この子は俺に対する第一印象は最悪らしい。 全然理由がわからない。 …でも、 「…なぁ。」 「何。」 「…これからもよろしくな!」 「…は。」 何故だかこの子と仲良くなりたい。 他の女子とは違う感覚。 とても、不思議な子。 「おぉ。」 「あら、よかったじゃない。姫。」 「…。」 「…駄目か?」 スッ 「!」 急に手を差し出してきた美姫。 …握手?と思い、爽也も手を差し出すと、 「…後ろ。」 「…ん?どうかしt」 「春野爽也君。もう朝のHRが始まりますよ。」 ビックゥ!! 首がもげるぐらいの勢いで後ろを向くと、 「あらあら、春野爽也君。どうしました?顔が真っ青。」 …3A担任絹宮冬美 口調は大変大人しく、容姿も麗しいぐらいだが、怒ると黒い笑みを発動する…! 「…春野爽也君。」 「はいっ!」 「貴方のお友達はもう行ってしまったわよ?」 「…あいつらぁっ!」 さっきまでいた拓実と玖未は既に姿を消し、廊下にいたギャラリーもちらほらと自分のクラスへ帰っている。
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