出会い…?

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「ほら、早く帰りなさい。」 「う、」 「…早く。」 「!!はぁーい!…じゃな、雪園さん!ってあれ?」 名前を読んだが、美姫は既に自席に戻り、読書をしていた。 キーンコーンカーンコーン 「だぁぁぁ!鳴った!」 チャイムが鳴るのが早いか、爽也は自分のクラスへ全速力で走っていった。 「…全く。騒がしい子ですね。」 「…同意します。」 美姫の席は教卓の真ん前。 まだクラス内はひそひそ話などで少し煩い。 その中の会話は、殆どがさっきのやり取りでの話だ。 「しかし、珍しいですね。」 「…何がですか?」 「貴女が彼の様な“人気者”と会話をするなんて…クスクス」 いかにも珍しそうに美姫を見つめ、意地の悪そうにニコニコしている。 「…私があのような人が嫌いといつ言いましたか?」 「表情から読み取れますよ。」 「…私余り表情表に出していませんが。」 「私は他の人より観察力が高いんですよ。」 …これ以上会話しても無駄だな。 私はこういう人は嫌い。 馴れ馴れしい人も、自己中心的な人も、自分が一番だと思っている人も。 …人なんて、大嫌いだ。 「自己嫌悪に陥らないでくださいね。雪園さん。」 「陥ってません。世の中の人間の汚さを考えていました。」 「怖いことを考えないでくださいな。無表情だから尚更です。」 「…HR始めてください。」 「あぁ、そうでしたね。」 さぁ、皆さん静かにしてください。 と先生が生徒を宥めている間、美姫は爽也の事を考えていた。 ――何故だろう。 ―彼とは仲良くなれる気がする…? (…気のせいだな。) その考えにたどり着き、 先生の話を聞かず、また読書に没頭した。 「お前らなぁ!」 「ふふっ、ごめんなさい。」 「余りにも会話に没頭してたからな。」 二人は爽也と同じ3年B組。 今は朝のHRも終わり、一時間目の準備をしている。 「…そんなに楽しそうだったか?」 「えぇ、少なくとも姫は楽しそうだったわ?」 「あれで!?」 「あれで。」 断言できる柊は凄いと思った。 あれで楽しい? 表情は全く変わらなかった。 それに会話中俺と目を会わせようともしなかった。 軽く拒絶されていた様な気がしてならない。
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