氷、

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氷、

写真部訪問から1週間近くたった。 何故か美姫が隣にいると背後から殺気を感じるようになった。 しかし、それ以外は何一つ変わらない日常だった。 ……そう思っていた。 「…。」 「…。」 沈黙が重い。 いつもと同じように昼飯を美姫と共にとっていた。 しかし、何故だかいつも以上に沈黙が長い。 最近は話し掛けたらそれなりに返事を返してくれる様になっていた。 だが、今日は…。 「さっきの時間数学で、」 「爽也。」 「…?」 「…黙って食べて。」 「…は?」 「マナー、だよ。」 「あぁ、…うん。」 …と言う感じだった。 ‘マナー’なんて単語久々に美姫の口から聞いた。 最初は言っていたが、後に聞いたら単に喋りたくない為の口実だったらしい。 何故だろう。 急に変わったんだ。 まぁ1週間前、写真部で少しヨレヨレになった美姫を見てからだ。 その日から、昼飯を早めに食べてさっさと何処かに行ってしまう。 他人のクラスに取り残されるこちらのみにもなっていたい。 そして、また少しヨレヨレになって昼休み終了ギリギリに帰ってくる。 「どうしたの?」 「…何が。」 「最近制服汚れてきてるなー、と」 「…階段から落ちるんだ。」 「…ふーん。」 「怪しいか?」 「十分過ぎる程に。」 「…知らん、出てくる。」 「えーっ!またかよ。」 「…。」 「早く戻ってきてねー!」 「何処の新婚夫婦だ。」 「はは、」 「…早めに戻ってくる。」 「うわ!旦那降臨した!」 一人で笑っているといつの間にか美姫は教室から姿を消していた。 「…爽也君!」 それを見計らった様に数人の女子が話し掛けてきた。 「んー、何?」 旦那(美姫)を待っていようと“ダラダラ戦隊ダラレンジャー“ダラグレー(ver.パンダ) のストラップを弄っていた爽也だったが、話し掛けられたのでそちらに見向きもせず一応返事をした。
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