夏の夢

1/7
16人が本棚に入れています
本棚に追加
/44ページ

夏の夢

「はぁっ!?告白してない!?」 あの後、無事に美姫を家まで送り届け、一日を終えた。 次の日。 朝練に出たら無駄にニヨニヨした拓実に思いっきり背中を叩かれ、 「で?返事はどうだった?」 と聞かれた。 全く意味がわからず、首を傾げているとニヨニヨ顔がだんだん真面目になり、正座を命じられた。 「…お前さ、あれは告白するべきだっただろ。」 「だから!俺は謝罪に行ったの!」 爽也はグラウンドに直接座りながら地面をばんばん叩いている。 叩かれた場所からは砂埃がたち、爽也が少しむせた。 「…っげほ!」 「あほ。叩きすぎだ。」 「先輩達!もう朝練の時間終わりなんで着替えて下さいだそうです!」 「あぁ!今行く…っ!」 「あ?どーした?」 「あ…足痺れたぁぁぁ…!」 「(馬鹿だ…。)」 しかし拓実は気にもせず、一人で部室へ行ってしまった。 「はっ薄情者ぉぉぉ!!!」 拓実に手を伸ばすが叶わず、空を切った。 今の爽也の状態は手と膝を地面に付け、部室の方へ手を伸ばしている。 しかもグラウンドの微妙な位置。 移動したいが、足が痺れているので立つことさえ出来ない。 「あ…し、足が…!」 「…何をしている。」 「!」 声のする方へ顔を向けると、無表情の美姫が立っていた。 昨日あの気まずい雰囲気があったのだ。普通だったら恥ずかしくて顔を背けるだろうが、今の爽也にそんな考えはない。 一刻も早く着替えたいのだ。 なりふり構っていられないのだ。 「美姫…!肩貸して!」 「…は?」 「大丈夫!多少身長差が有ろうが肩貸してもらえれば頑張るから!頑張れるから!」 「…意味が分からない。」 少し困ったように頬をかきながらも、爽也の隣にしゃがみ、肩を貸した。 「助かったぁ…!ありがとうな、美姫。」 「別に構わないが…、足に怪我でもしたのか?」
/44ページ

最初のコメントを投稿しよう!