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断続的に水が床を跳ね、それに併すかのように濡れた髪から水が滴り落ちる。
「……最悪。
絶対変な人だと思われた」
あのあとすぐに通信をブツンと断たれた。ユリアとしては軽い遊び心だったのだが……。
「もう……、お嫁に行けない」
曇った鏡を縦になぞる。
そしてなにが何処でどうなったのかは分からないが、彼女の小さな憂鬱は将来の縁談にまで発展してしまったらしい。
場所に似つかわしくない、寝巻き用の浴衣が備えられていたので、勝手に拝借することにした。もっともシャワーも許可のない使用だったのだが。ユリアはタオルを頭にのせ、外を眺めるため窓に近づく。
夕暮れの中庭。
整った美しい緑。
畏れすらも齎す壮大な湖。
そっと窓に触れようとしたが、まともな休息を取っていなかったせいか、不意にバランスを崩しふらりとベットに身を任せた。
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